令和4年1月より傷病手当金の支給期間が改正となります。当事務所でも年間を通じて申請回数がとても多い傷病手当金ですが、業務外でコロナに感染して会社を休んだ場合にも傷病手当金の支給申請が出来ます。万が一の時にとても頼りになる給付金です。今回は傷病手当金の支給要件等について改めて解説いたします。
傷病手当金とは
傷病手当金は健康保険の被保険者が業務外のケガや疾病で労務不能の状態となり、就労できないため、給与の支払いが無かった日について支給される給付金です。医師が労務不能と認めた場合、入院だけではなく自宅療養でも申請できます。ただし、健康保険の適用外である美容整形などは対象外となります。健康保険の被保険者期間は問われません。
待機期間
傷病手当金の支給要件として4日以上労務不能であることが挙げられます。このうちの最初の3日間を待機期間と呼び、待機期間中は傷病手当金の支給はありません。つまり4日目以降が傷病手当金の支給対象になるのです。
また、この3日間については連続していなければなりません。傷病手当金自体はお給料が発生していない日について対象となりますが、待機期間は年次有給休暇を使用していても構いませんし、会社が定めた病気休暇などで給与が発生していても3日連続で休んでいれば待機完成となります。
傷病手当金の支給期間
法改正のあった部分です。令和4年1月より同一の傷病などで支給開始から“通算して”1年6ヶ月以内が傷病手当金の支給期間となります。
この図のように欠勤が連続している場合は、支給開始から1年6ヶ月以内が傷病手当金の支給期間です。
次の図は今回の改正内容です。
今までは傷病手当金は支給開始から1年6ヶ月以内が支給対象期間でした。そのため、出勤と欠勤を繰り返すような症状の場合、1年6ヶ月を過ぎてしまうと支給対象ではなくなっていました。今回の改正では【傷病手当金の支給期間を通算して1年6ヶ月以内】が支給期間となります。つまり1年6ヶ月分がもらえることになります。
【追記】なお、この改正は令和4年1月から行われますが、施行日前日(令和3年12月31日)においてまだ1年6ヶ月が経過していない人についても対象となります。ただし、施行日前日にすでに1年6ヶ月が経過した方については対象外となります。
傷病手当金の支給額
傷病手当金の一日の支給額は、支給開始以前12ヶ月の標準報酬月額の平均額の1/30の2/3です。言葉で説明すると分かりにくいので、支給開始以前の1年間の途中で標準報酬月額が変わったと仮定したサンプルで実際の金額を算出してみます。
健康保険では1ヶ月を30日とみなします。この様にして算出した傷病手当金の日額が労務不能で給与が出ない期間支給されます。ただし、一部でも給与が支給された場合、その額が傷病手当金より少なければ、差額が支給されます。
また、入社して1年未満の被保険者の場合は、次のうち少ない方が日額となります。
①被保険者期間に応じた月数の標準報酬月額の平均※ ÷ 30 × 2/3
②前年9月末日の全被保険者の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3
※前職を退職して1ヶ月以内に同じ協会けんぽの会社に就職した場合は、2社を通算した標準報酬月額で算出します
退職後の傷病手当金
ずっと療養をしていたものの残念ながら会社を退職する場合もあるでしょう。そんな時、退職後も支給期間満了まで傷病手当金をもらえる場合があります。前提条件は【引き続き1年以上健康保険の被保険者であった者の退職】であり、かつ、以下のどちらかの条件を満たした場合です。
①既に傷病手当金をもらっている
②傷病手当金をもらえる要件は満たしているがまだ支給されていない
言葉で見ると②は分かりにくいかもしれません。以下の図をご覧下さい。
この図の場合、待機は完成しているものの、退職まで年次有給休暇を使い給与が支払われているため、傷病手当金の支給はペンディングとなっています。これが【要件は満たしているがまだ支給されていない】と言う状況です。
なお、本来は任意継続被保険者(会社を退職した後も全額自己負担で同じ健康保険に加入する)は傷病手当金の支給対象ではないのですが、この退職後の傷病手当金の要件を満たした場合には、資格喪失後に任意継続被保険者となった場合でも上記の要件を満たせば、労務不能の期間、通算で1年6ヶ月以内傷病手当金を支給期間満了までもらうことができます。
申請方法
傷病手当金は労務不能であることを医師に証明してもらう必要があり、また欠勤などに入る前の給与額の証明は給与を支払った会社がしなければならないため、一般的に会社が窓口となって支給申請を行います。しかし退職後については給与が発生しませんので、会社を通さず自分で医師の証明をもらって申請します。
まとめ
傷病手当金のポイントは3つです。
ここでは書ききれないその他細かい決まりはあるものの、いざという時に頼りになる給付が傷病手当金です。誰でもケガや病気にかかる可能性があります。そんな時、お給料の補填があったら安心して療養に取り組めますね。今回の支給期間の通算という改正は、がんなどの病気治療と仕事の両立ができる社会を実現させようという改正なのです。