ストレスチェック制度のポイントその2【対象事業場とストレスチェックの内容】

ストレスチェック

昨年12月に施行となったストレスチェック制度義務化の内容について今回は触れてみたいと思います。注意ポイントを後半にまとめておきますのでチェックしてみてください。

ストレスチェックが義務化された事業場とは

常時使用する労働者50名以上の事業場です。この人数もポイントなのですが、重要なのは事業場で人数をカウントするということなのです。会社全体で50名以上ではないんですね。例えば本社(30名)・A支店(10名)・B支店(10名)で合計が50名だとしても各事業場を見るとどこも50名には達していません。このような事業場はストレスチェックは義務ではないのです。

そして常時使用する労働者という点にも注意が必要です。細かい要件がありますが、簡単に申し上げると、フルタイム労働者と健康保険の被保険者となっている労働者と覚えておくといいと思います。正社員とは一言も書いてありませんのでご注意くださいね。パートタイマー・アルバイトの人も対象者に含まれる場合があります。

しかし、ストレスチェック義務化対象外だといっても労働者のメンタルヘルス対策をやらなくていいという訳ではありません。以前にもお話したのですが、私が行う最近のストレスチェックのセミナーには義務化対象外の企業のご担当者様が多く参加しています。従業員300名の大企業で1人のメンタル不調者が発生するのと、従業員10名の企業で発生するのでは後者の方が大変なのです。ですから、最近は小さな事業場の方も非常にこの内容に興味を持ってくださっています。

ストレスチェックの対象事業場となったら

ストレスチェックをこれから毎年1回実施して、実施人数を管轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。この年1回の実施時期ですが、実施時期は事業場にゆだねられています。ただし法律の施行が平成27年12月1日なので、最初の1回は施行日の1年以内すなわち平成28年11月30日までに行う必要があります。

さぁ、それではストレスチェックの内容を見てみましょう。

ストレスチェックの内容

ストレスチェックでチェックする内容は、次の項目です。

  • 職場における心理的な負担の原因に関する項目
  • 心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
  • 他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

以上の項目をチェックしてその結果は労働者本人に渡されます。そしてチェック内容を分析した結果高ストレス者となった労働者から申し出があったら事業主は医師による面接指導を行う必要があります。そして必要に応じ事業主は職場環境や就労条件の改善等を行うと言う流れです。

ストレスチェックの内容をさらっと書きましたが、ここで注意ポイントをまとめます。色々ありますよ。

ストレスチェックで注意しなければならないポイント

労働者にストレスチェックを受ける義務は無い

え?そうなの?そうなんです。これがまず重大なポイントです。事業主は労働者にストレスチェックを受けなければならないのだ!と強く言えないのです。あくまで会社は“職場環境の改善のためストレスチェック制度を導入するので、ご協力お願いします”というスタンスで周知するしかありません。それじゃみんな受けたくないって言うかもしれない!そうですよね。ですから労働者への最初の周知がポイントとなってくるのです。なぜこの制度の導入をするのか、そこから説明する必要があります。すなわち事前準備が必要なのです。

ストレスチェックの結果は労働者の同意が無ければ事業主に通知されない

この労働者の同意というのもポイントです。今度は事業主からのお嘆きの声が聞こえてきそうです。“えー?結果が分からなければ職場環境の改善できないじゃない!” プライバシー性の高いストレスチェックの結果は直接本人に通知されます。“同意があればいいんだな。じゃー最初にみんなから同意をもらっておこう!” なるほど・・・しかしこのアイディアはNGです。

ストレスチェックの結果の事業主への提供に対する労働者の同意はストレスチェックの結果通知を受けた後にとる必要がある

事前じゃだめなのです。結果が本人に通知されてから同意をとる必要があるのです。なんだか色々な縛りがありますね。そして医師による面接指導を申し出た労働者が出た場合には、結果の事業主への提供に同意があったとみなしてよいと言うことになっています。

事業主はストレスチェックの受検勧奨をすることはできる

どのチェックポイントも事業主泣かせですが、事業主は労働者の同意がなくてもストレスチェックを受けた労働者のリストをもらうことはできます。そして受けていない人に“ストレスチェック受けてね”と言うことはOKなのです。

ストレスチェックの事務実施者の制限

なにそれ?ですよね。これも大きなポイントになります。恐らく多くの企業では人事部などが中心となってストレスチェック制度の準備することになると思いますが、人事権者(労働者の解雇などができる人を想定してください。)はストレスチェック実施以後の一連の事務には従事できないのです。人事部長などが中心となって準備してきても実際のストレスチェックが開始したら蚊帳の外に出てくださいということです。紙媒体でのストレスチェックを行う場合、用紙の配布までは人事権者が行うことができます。なぜなのでしょうか・・・これは次のポイントにかかわります。

ストレスチェック制度に伴う不利益取扱の禁止

今回のストレスチェック制度については次のような不利益取扱が禁止されています。

  • 労働者がストレスチェックを受検しないことを理由とした不利益取扱い
  • ストレスチェックの結果を事業主に提供することに同意しない労働者に対する不利益取扱い
  • 労働者が医師による面接指導の申し出をしたことを理由とした不利益取扱い
  • 面接指導の結果を理由とした不利益取扱い

例えばストレスチェックを受けないから解雇(これは極端すぎですが)などという不利益取扱いは禁止されているのです。人事権者がこのような不利益取扱いをしてしまう危険性を回避するために5.のような制限がかかっているのではないかと思います。

沢山ポイントを書いてきましたが、最後に、前回書いたポイント【ストレスチェック制度の目的】をもう一度思い出していただきたいので書いておきます。

  • セルフケア(ストレスへの気づきをうながす)
  • メンタルヘルス不調の未然防止
  • ストレスの原因となる職場環境の改善

ストレスチェックはこの目的で行うものです。決して不調になっている人をあぶりだすものではありません。未然防止のために行うんだと言うことを今一度思い出してください。

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